信頼できる人に託して管理・運用・処分してもらうことをいいます
信託とは、自分の財産を信頼できる人に託して管理・運用・処分してもらうことをいいます。文字どおり、財産を「信じて託す」仕組みであることから信託と呼ばれます。信託法という大正11年に法律で制定された財産管理の方法です。
何も対処していないと、財産を持つ人が認知症などで管理能力が失われたとき、資産が凍結されてしまい使えなくなってしまいます。家族信託では、認知症による財産の凍結を予防することや、二次相続者の決定ができます。
たとえば、親が子に財産の管理を委託していると、突然親が病気で入院してしまいお金が必要となるケースでも、委託された財産から入院費用を引き出せるのです。家族信託は、病気で長生きする場合にも備えられ、本人の財産を有効に扱える便利な制度と言えるでしょう。
- どんなときに家族信託が必要?家族信託は、将来の財産管理、認知症対策、障がいをもつ子どもへの財産管理などに使われています。あらかじめ信託契約で決めごとを設定するため、円滑な財産の運用・処分が具体化することができます。
- 老後を見据えて子供に財産管理してもらいたい子どもに家族信託すると、財産を持つ人(父)が認知症や介護を要する状態になりお金の管理が難しくなったとき、父の財産を処分・活用ができます。通常は、いくら親子であっても父名義の財産は子どもでも手を付けることはできません。たとえば、介護が必要な状態になり、持ち家を処分して施設の入居費用にあてたい場合、家族信託していなければ、父以外の人が不動産を処分・換金できないのです。認知症を発症すると家族信託は不可能となるので、この先の人生に備えて、健康で正常な判断ができる間に家族信託しておくことが重要です。
家族信託には、財産管理、遺産相続、福祉などの面で、これまでの制度には無かったメリットが数多くあります。
- 成年後見と比べ、より柔軟な財産管理が可能となり、負担も少ない後見人は、本人が認知症などによって判断能力が衰えた後でないと財産の管理を始めることができませんが、家族信託は、契約した時点からすぐに管理を始めることができます。また、後見人は法律によって、できることに制限がありますが、家族信託は「契約」により、財産管理の方法を自由に決めることができます。
さらに、成年後見制度を利用する場合には、家庭裁判所への定期的な報告義務や後見人・後見監督人への報酬支払義務が発生しますが、家族信託にはこのような負担はありません。家族信託は裁判所の関与が必要ないため、利用しやすくなっています。 - 遺言ではできなかった二次相続の対策が可能となる家族信託は、財産の管理・処分を委託できるだけでなく、自分の死亡後の財産の承継者を指定することもできます。つまり、家族信託は、遺言と同じように利用することもできますなお、遺言は、自分が死亡したときの財産の行先を指定しておくものです。それ以上先の指定はできません。たとえば、「自分が死亡したときには、全財産を妻に相続させる」と遺言を書くことはできますが、「全財産を相続した妻が死亡したときには、その財産は自分の姪に相続させる」と、自分が死亡した後の相続まで指定することはできません。
しかし、家族信託では、当初は自分を受益者とし、自分が亡くなった後には配偶者を受益者、配偶者が亡くなった後には姪を受益者にするというように、受益者を連続して指定することもできます。つまり、遺言は一次相続までしか指定できませんが、家族信託を利用すれば二次相続以降の対策も可能になるということです。 - 相談から手続きまですべて依頼できる家族信託は、相談からすべての手続きが可能な司法書士などの専門家に依頼することがベストです。相談から完了までは2~3カ月程度かかり、不動産登記には法務局、公正証書を作るのは公証役場、信託口座の開設には銀行と、平日の営業時間に手続きをすまさなければなりません。依頼者も同席する場面はありますが、それ以外の手続きや交渉はすべて専門家が行います。専門家に依頼すると、ワンストップでスムーズな契約が実現するのです。
家族信託を専門家に依頼するデメリットは、手続き費用がかかることでしょう。
法律と相続の高度な知識・経験がないと家族信託の運用は難しく、専門家への依頼は必然です。家族信託は、費用がかかる以外にデメリットはないと言えるぐらい、専門家に依頼するメリットが大きい制度です。こちらでは、唯一のデメリットである費用について説明します。
- 専門家に依頼する費用がかかる費用内訳は、専門家への報酬と登記費用の他、公証役場での費用です。司法書士や弁護士なら、相談から信託契約の設計、公証人との立ち合いなど相談から手続き完了まで依頼できますので、50万円~100万円程度の費用が必要です。
- 地域により不動産額が異なり報酬が大きく違う不動産を家族信託する場合、不動産の価値により専門家の報酬や実費が異なります。1m2あたりの価格が福岡と東京でも大きく違うことから、土地や不動産などの価値により専門家への報酬や実費が変わってしまうことは避けられません。相談時に、報酬と実費がいくらかかるのか確認してから契約しましょう。
- 受託者は身上監護ができない成年後見人は、被後見人の身上監護を行う権限を与えられるため、介護施設への入所手続きや病院に関する手続きができます。一方、家族信託の受託者には身上監護の権限はありません。身上監護について任せたい場合には、成年後見制度を合わせて利用する必要があります。
家族信託に関するよくある質問
- 家族信託ではどのようなことができるのですか?
- 託された人の側で(名義で)託された資産を管理運用したり、売却したり贈与したりすることができます。資産を託した後に本人の判断能力が低下・喪失したとしても、本人の意思確認手続は本人に対して行われないため、資産が凍結されるリスクがなくなります。また最終的に(本人が亡くなったら)、その資産を指定した人に承継させるといった遺言のようなことも可能になります。
- 家族の承諾は必要ですか?
- 法律的には委託者と受託者以外の家族の同意は不要です。(委託者と受託者の同意さえあれば、信託契約は成立します。受益者の合意も不要です)しかし現実的には、親の財産管理や資産承継について、家族全員による理解・意識共有がなければ、スムーズな信託事務処理は難しいといえるでしょう。そのため、家族信託の利用にあたっては、契約当事者以外の家族も含めた話し合いを行うことが望ましいといえます。
- どんなものが信託財産に組み込めるのですか?
- 法律上は、信託できる財産に特別の制限はありません。ただし、家族信託は本格的に普及が始まってからまだ間もないこともあり、実務に対応できる銀行・証券会社などの金融機関がまだ少ない状況です。そのため、信託可能な財産は、実際のところ「不動産」「現金」「未上場株式」に限られているのが現状です。かつて成年後見制度の開始当初も対応可能な金融機関が少ないという問題がありましたが、現在ではその多くが対応しています。家族信託も、今後のニーズの盛り上がりを受けて対応可能な金融機関が増えていくと思われます。
- 家族信託契約を締結するためには公正証書による契約が必要ですか?
- 法律的には必ずしも公正証書を用いる必要はありません。しかし、公正証書で契約書を作成しておくことで原本紛失のリスクがなくなり、契約の有効性も担保されるため、家族信託契約の締結には公正証書を用いるべきです。